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あれはカップヌードルじゃない!

加工食品
田村十七男
田村十七男

譲り難き原形との明らかな差異

オリジナルであること。それは、この世に数多ある製品の中から身銭を切って買う際の重要なキーワードになっています。見極めるべきは、オリジナルの意味。「本物」と言い切りたいのですが、対になる「偽者」への言及が避けられず、下手なことを吐いて方々に角を立てるのも本意ではないので、「元祖」または「原形」とします。

オリジナルに惹かれるのは、それまでになかったカタチで世に出た出自。ゆえに時代に合わせたものづくりをしても、源泉を見失わない限り独創性が揺らがない、あえて言えば他を圧倒するアドバンテージを感じ取ることができるのです。

例を挙げると、僕の場合はギターやクルマといった趣味性が強い領域で、オリジナル偏向が高まります。極端に言えば、他は手を出さない。けれどオリジナルは総じて高価なので、若い時分は手が届く代用品で我慢しなければなりません。場合によっては散財したりする。そうした経験は、オリジナルにたどり着くための通過儀礼と言えるでしょう。

翻って、僕がカップ麺類でカップヌードルしか食べないのは、オリジナルだからなんだと思い至りました。「食足世平~食が足りてこそ世の中が平和になる~」という理念を掲げる日清食品の創業者、安藤百福氏のアイデアから生まれた逸話は、多くの方がご存じでしょう。麺でもラーメンでもなく、お湯を注いで3分で完成するヌードル。その譲り難き原形との明らかな差異に引っ掛かったのが、今回のお題である『カップヌードル 魚豚(ぎょとん)』であります。

ちなみに僕の日常的ナンバーワンは、チリトマトヌードル。レギュラー系より100Kcalくらい低い『あっさりおいしい』シリーズも、わりと好みです。

こういうカップヌードルがあってもいいけれど

お湯を注いで3分。それ以外は何もすることなく食べられるのがカップヌードルのオリジナリティ。なのに『カップヌードル 魚豚(ぎょとん)』は、注湯3分後に『ザラザラ追い魚粉』なる別添を足して召し上がれと言う。

そんなひと手間を許していいのだろうか? 草葉の陰で百福氏がむせび泣くのではないか? 

以上は要するに、さしておもしろくない脚色です。カップヌードルの長い歴史の中で別添が存在した事実は僕も知っています。2010年代中期に登場したとされる『世界のカップヌードル』シリーズには、注湯後にペーストを足す種類がありました。シリーズに属する『カップヌードル パクチー香るトムヤムクン』や『カップヌードル シンガポール風ラクサ』などは、再販を繰り返し現在も販売されています。

それらを初めて食べたタイミングは思い出せませんが、何のかんの好意的に受け止めました。長く続けていれば、こういうカップヌードルがあってもいいよねと。しかもシリーズという支流を設けた策には誠意を感じたし、何よりけっこう美味しかった。

だから、これまた『くせになる旨さ』シリーズの新製品として2025年8月に発売された『カップヌードル 魚豚(ぎょとん)』も、別添の新しいヤツとして優しく迎え入れることができたのです。

しかし、いかに別添付きであれ、何かが決定的に違う⁉ 。僕は、その違和感を表現する言葉を見つけ出せずにいました。

別添系は人気があるようで、再販が繰り返さているそうな。それらも見つければ、つい買ってしまいますね。本流とは別系統だから納得できるのでしょうか。

やはりオリジナルは強い

「あれはカップヌードルじゃない!」

わりと最近、近所の飲み屋の常連がいきなり切り出しました。酒の場は何が話題に上がるか予測不明なので、常に緊張感を保たねばなりません。

発言者曰はく『カップヌードル 魚豚(ぎょとん)』は、あの手この手に挑む他のカップ麺ブランドの発想ないしは味に近いらしいんですね。だから、「じゃない!」と断じることができると。

確かに、つけ麺を彷彿とさせる魚介豚骨の主張は、別添の『ザラザラ追い魚粉』をまぶす以前から激烈。なおかつ粉を足せば、ザラザラというよりスープがドロドロになり、つけ麺感がさらに加速。これほどクセが強いカップヌードルは、かつて存在しなかったんじゃないか……。この評価が僕の限界でした。

そこから先に踏み込めなかったのは、自分に比較対象となる他のカップ麺体験が乏しかったから。なるほど、納得です。半年近く抱えていた言葉足らずのモヤモヤが解消されました。感心もしました。みんな何のかんの、いろいろ試している事実を知ることができて。

ならば自分も、とならないのは、オリジナルに敬意を払うスタイルを今さら変える気になれないから。それにカップヌードルだけをたどっていても、『カップヌードル 魚豚(ぎょとん)』のような異質と出会えるなら、このジャンルで幅を広げる必要性を感じないだろうし。

さておき、あるカップヌードル人気ランキングによると、トップ3は初期メンバーの『カップヌードル』『カップヌードル シーフードヌードル』『カップヌードル カレー』が独占するそうです。個人的には次点の『チリとマートヌードル』がナンバーワンですが、いずれにしてもオリジナルは強いってことですね。改めて敬意を表したいと思います。

さて別添。粉末の追加でクセの強さがアップグレードする魚介系のフレーバーは極めて挑戦的です。嫌われるのを恐れなかったんでしょうね。僕は好きですけれど。

追記:『カップヌードル 魚豚(ぎょとん)』は期間限定ではないようですが、取扱店にばらつきがあるみたいです。僕の近所では、スーパーマーケットになく、ドラッグストアにあります。

田村十七男

訳あって十数年前に一人暮らしを選んだ際、「ちゃんと暮らす」という目標を掲げた60代前半のフリーランスライター。目標に関して言えば、それまで人任せだった料理に取り組める自分の意外性を知り、我が人生の大発見と自負しております。誰にも気兼ねしない自由と、親譲りの貧乏性がせめぎ合うスーパーマーケットで、今日もお買い物!

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  • コジカism

    夫と中学生の娘との3人家族。 フリーランスで自宅を仕事場にしながら、 娘のお弁当づくりと、近くに暮らす高齢の母のケアをワンオペでこなす日々。 「旬のものをバランスよく食べさせたい」という理想と、 「外食も好きで手抜きもしたい」という本音の間で格闘しつつ献立を模索している。 和食、特に魚が好きな娘に合わせ、 焼き魚と具だくさん味噌汁との組み合わせが食卓に登場する頻度が高い。 自分のためだけの食事づくりは徹底的に手を抜く。

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