
これって兆し?
“盛りたい”けど“整えたい”――パラドックス消費が広がる背景
🍚“盛りすぎ”と“ケア系”が同時に求められている?
最近、食品売場や外食メニューで、少し対照的な動きが同時に広がっているように感じます。
一方では、ボリューム感や濃厚さ、背徳感を前面に出した「盛りすぎ」「濃すぎ」「ご褒美系」の商品。
もう一方では、デカフェ、栄養バランス、たんぱく質、完全栄養食などを訴求する“ケア系”の商品。
一見すると真逆のようですが、どちらも同じ生活者の気分を映しているのかもしれません。
食べることで満たされたい。でも、食べた後に後悔はしたくない。
そんな“パラドックス消費”が、少しずつ見えやすくなっているようです。
背景にあるのは、ストレスと自己調整の両立
背景には、物価高や忙しさ、日々のストレスの中で、食に“報酬”を求める気分があると考えられます。
疲れた日には、たっぷり食べたい。
濃い味や甘いもの、ボリュームのあるものに惹かれる。
こうした欲求は、単なる食欲ではなく、気分を立て直すための小さなご褒美として機能しているのではないでしょうか。
ただし、今の生活者はそこで終わらないようにも見えます。
カロリーや栄養、睡眠、体調への意識も同時に高まっているため、“思いきり楽しむ日”と“整える日”を使い分ける感覚が生まれているのかもしれません。
商品にも表れる“背徳”と“賢さ”の二面性
この動きは、商品や販促にも表れています。
コンビニでは、価格据え置きで増量するキャンペーンや、見た目にもインパクトのあるボリューム商品が話題化しやすくなっています。外食でも、背脂、肉増し、濃厚系など、“振り切った満足感”を打ち出すメニューが目立ちます。
一方で、カフェインレス飲料、栄養設計されたパンやスープ、たんぱく質や食物繊維を訴求する商品など、日常の中で無理なく取り入れられるケア系商品も広がっています。
注目したいのは、生活者がどちらか一方に固定されているわけではない点です。
平日は栄養バランスを意識し、週末は背徳感のあるものを楽しむ。
夜はデカフェを選びつつ、昼にはガッツリ系を食べる。
そんなふうに、同じ人の中で“報酬”と“罪悪感回避”が共存していると考えられます。
メーカーに求められるのは、二極をつなぐ提案?
メーカー視点で見ると、この流れは単に「健康系を強化する」「ガッツリ系を出す」という話だけではなさそうです。
むしろ重要なのは、生活者の中にある矛盾をどう受け止めるかです。
例えば、満足感はしっかりあるが、たんぱく質や食物繊維も摂れる商品。
濃厚な味わいだが、糖質やカフェインを調整した商品。
あるいは、背徳系メニューとケア系飲料をセットで提案する売場づくりも考えられます。
つまり、これからは“我慢させる健康”ではなく、“楽しんだ後ろめたさを軽くする設計”が価値になっていく可能性があります。
まとめ
「盛りすぎ」と「賢い健康」は、反対方向のトレンドに見えて、実は同じ生活者の中でつながっているのかもしれません。
食で気分を上げたい。
でも、自分の体や生活も大事にしたい。
この揺れがあるからこそ、背徳感のある商品とケア系商品が同時に支持されているように見えます。
この動きが一時的な話題化にとどまるのか、それとも食品設計の新しい前提になっていくのか。
“食べたい自分”と“整えたい自分”の両方に応えることが、これからの商品開発や売場提案のヒントになりそうです。
無料トライアル、資料請求などのお問合せはこちらからお願いいたします
お問合せおすすめ記事
酷暑の夜は、ノンアルより“爽快感”?――アルコール代替飲料の次の選ばれ方
ノンアルコール・低アルコール飲料は、飲酒の有無を自分で選ぶスタイルとともに、生活者の選択肢として定着しています。飲酒の雰囲気を楽しめる。周囲と同じように乾杯できる。翌日の負担を抑えられる。ソバーキュリアスの広がりとともに、お酒を飲まなくても、飲酒シーンから疎外されないことが価値として支持されてきました。しかし最近、その先ともいえる選ばれ方が見え始めています。酷暑が生む「すかっとしたものを飲みたい」暑い日の夜、必ずしもビールを飲みたいわけではなくても、冷たく、炭酸の効いたものですっきりしたい。そんな感覚を持つ人は少なくなさそうです。ポッカサッポロフード&ビバレッジの「北海道富良野ホップ炭酸水」は、ホップの香りとほろ苦さを持つ無糖炭酸水です。アルコール代替として支持が広がり、2025年の販売金額は前年比62%増、2026年1~6月も前年同期比20%増となりました。ここで満たしているのは、単に「ビールに似たものを飲みたい」という需要だけではないのかもしれません。酷暑で火照った身体を切り替えたい、強い爽快感で一日を区切りたいというウォンツとも重なっているように見えます。
New
“もったいない”を前に出す、フードロス対策の新商品
今回は、廃棄されるはずだった果実を主役にした2つの商品に目が留まりました。どちらも見た目の理由ではじかれた果実を使い、その事実を商品名の頭にそのまま掲げています。メロンのチューハイと、バナナのスナック。素材も売り場も違いますが、“もったいない”を入り口にしている点が重なりました。
New
韓国の味が日常になる理由。そこから広がる、アジア麺。
最近、即席麺の売場で、韓国らしい辛さや味わいをうたった商品を見かける機会が増えました。輸入商品だけでなく、日本メーカーが手がける韓国メニューも並び、フォーやラクサなどのアジア麺も、その周辺で少しずつ存在感を見せています。「KSPレンズ」のPOSデータを見ると、韓国系を中心としたアジア味の商品は、金額・数量ともに前期を上回りました。中でも目立つのが、カップ麺ではなくインスタント袋麺の伸びです。袋麺には、複数食入りの商品も多くあります。一度だけ試してみる商品というより、家に置いて、食べたいときに何度か楽しむもの。そう考えると、韓国系麺は話題の味というだけでなく、日常の食事に入り込み始めているのかもしれません。背景には、韓国の音楽やドラマ、SNS、旅行などを通じて、食に触れる機会が増えたこともありそうです。知っている定番の味を選ぶだけでなく、「韓国で今、人気のメニューなら試してみたい」と感じる人もいるでしょう。袋麺なら、卵や野菜、チーズなどを加え、自分なりの食べ方に変えることもできます。韓国の食文化を遠いものとして眺めるのではなく、家の食事に取り入れ、自分らしく楽しむ。そんな選び方が広がっているようにも見えます。一方で、アジア麺を好む人が、必ずしも辛い韓国系麺を選ぶとは限りません。フォーの軽さや、ラクサの香りに惹かれる人もいます。韓国系メニューが大きな中心にありながら、その周りに、好みに合わせたアジアの味が並んでいる。そう見ると、売場の景色も少し違って見えてきます。「韓国系麺発、アジア味再燃」は、韓国系商品の動きだけでなく、生活者がどの国の食文化を日常に取り入れ、どんな味へ関心を広げているのかを見るためのフィルタです。
トレンドフィルタNew